防火ドアは、火災時にきちんと閉鎖する必要があり、また定期点検も大切です。しかし以前は、防火設備の稼働状況に関する点検が十分ではありませんでした。そんな不備の問題も、ひとつの事故を契機に改善された経緯があります。そこで今回は、防火設備の定期点検に関する規定が変わった背景や防火ドアの点検内容をご説明します。
防火設備の定期点検に関する法規定の変遷
かつて防火設備の点検に関する建築基準法の規定は、消防法との間で曖昧な状況でした。しかし現在は、チェック体制について建築基準法に明記されています。
<定期点検の必要性が認識された背景>
防火設備のチェック体制が強化されたきっかけは、2013(平成25)年に起きた福岡市診療所の火災死亡事故です。この事故では、防火設備がきちんと設置されていなかったうえ防火扉も適切に機能せず被害が拡大したといわれています。
そんな事態を招いた背景に、建築基準法の問題がありました。この法律は防火設備の設置について規定があるものの、稼働状況に関するチェックは消防法との管轄領域が不明確だったのです。
<現在、定期点検は義務化>
福岡市の事故をきっかけに、建築基準法は定期報告制度が追加されました。この法改正により、防火設備の設置とともに稼働状況の点検もはっきり建築基準法の担当分野になります。
同時に、検査範囲も広がりました。これまで検査対象でなかった小規模な診療所や福祉施設も、国の政令により定期報告しなければならなくなりました。こうして、防火設備の定期点検・報告は義務化されたわけです。
防火ドアに関する定期点検の内訳
防火ドアは「随時閉鎖式」と「常時閉鎖式」に分かれますが、定期検査の対象は「随時閉鎖式」です。このタイプも複数の種類があり、構造に応じて火災時に正しく動作するかチェックされます。
<「随時閉鎖式」の種類>
随時閉鎖式とは、通常時に開放されているタイプです。火災時にドアが閉まる仕組みによって分類され、現在の主流は鉄扉がスイングして閉じるものと上部からシャッターが下りるものです。
火災の感知方法にも違いがあり、大半は煙感知式ですが熱感知式もみられます。また感知器と連動してロックが解除されるドア以外に、温度ヒューズが溶解してストッパーが外れるものも随時閉鎖式のひとつです。
<「随時閉鎖式」の点検内容>
随時閉鎖式の防火ドアは、火災が発生したとき機能しないと安全な防火区画をつくれません。
そのため検査では、火災を感知するとロックやストッパーが解除され適切にドアが閉鎖するか確認します。あまり勢いがあると避難者が挟まれる恐れもあるため、「運動エネルギー」や「閉鎖力」の測定も重要です。
また、防火ドアの前にダンボールや荷物が置かれていると正常な動作の妨げになります。人為的な不手際により被害が拡大すると建物の管理者が責任を問われる場合もあるので、定期点検でのチェックは怠れません。
まとめ
現在、建築基準法では防火設備に関して定期報告が義務化されています。随時閉鎖式の防火ドアは、きちんと火災を感知して的確に作動するかチェックが不可欠です。防火設備の機能不全は人命に関わるので、日頃から、しっかり定期点検しておくことが望まれます。
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