建築基準法では、「防火ドアは一定時間に渡って火に耐える性能を持つこと」と定義しています。防火ドアの役割を果たす要件のひとつに、素材があります。素材の選択肢はいくつかあり、それぞれの特徴を理解しておくと安全性に優れた防災設備を選ぶことができるでしょう。そこで今回は、何が防火ドアの素材に適しているか、また素材によってはどんな工夫が望ましいかご説明します。
鉄製・鉄骨コンクリート製・木製など
防火ドアとしての要件を備える素材には、鉄、鉄骨コンクリート、鉄筋コンクリートなどがあります。
鉄は、火災の熱で変形することはあっても基本的に消失しません。ある程度の厚さがあれば、一定時間は炎や熱を遮断できます。そのため建築基準法で設定された条件を満たせる代表的な素材として、これまで鉄を使った防火ドアが数多く作られてきました。
また最近、鉄に劣らないほど優れた耐火性能や断熱性能を発揮することから、防火ドアに活用され始めた素材が木材です。
通常、木は燃やすと炭になるため火に弱いと思いがちです。しかし分厚いものになると、表面が炭化して崩れ落ちても芯の部分はなかなか燃え尽きません。実は炭になった部分が炭化層を形成し、熱の進行を妨げているのです。この特性が生かされ、今では鉄扉以外に木製の防火ドアも多く流通します。
鉄扉は一般家庭に馴染みにくいかもしれませんが、木製ドアであれば玄関や室内の出入り口に設置しても違和感がないでしょう。火災時の安心・安全だけでなく環境にやさしい素材としても、木の扉はおすすめといえます。
ガラスは火に弱い?
ガラスは熱を加えると割れやすくなるため、防火ドアとして使う場合は網入板ガラスや耐熱板ガラスなどを用いなければなりません。
ビルでも一般家庭でも、いろいろな場所にガラス戸がはめ込まれています。火事が発生したとき建物の外壁に取り付けられたガラスが簡単に割れたら、そこから炎や熱が周囲に広がってしまい延焼を拡大させるでしょう。そんな事態を避けるため、都市部など建物が密集する地域ではガラスにも防災設備としての機能が求められています。
この条件をクリアするための手段が、防耐火ガラスの使用です。網入板ガラスは、金網が割れたガラス破片の脱落を阻止します。耐熱板ガラスは、火災の衝撃を受けても短時間のうちには破損しません。さらに火災および放射熱を遮断できるものが、ケイ酸ソーダ積層ガラスあるいはゲル封入複層ガラスです。
ガラスそのものは決して火に強いわけではありませんが、さまざまな工夫を施すことで遮炎性能を発揮できます。防災機能を備えたガラス戸を選べば、建物の安全性は向上するでしょう。
まとめ
防火ドアの性能は、素材に左右される部分が少なくありません。従来は鉄が中心でしたが、木材も意外と火や熱に強いことで知られています。ガラスも、加工方法によっては炎に対する強度を高められます。素材ごとの特徴を理解し、防災設備の充実に役立ててください。
※掲載内容は予告なく変更される場合がございます。予めご了承願います。