お座敷の仕切り戸としておなじみの襖は、平安時代より日本人に親しまれてきた伝統ある和建具です。一口に襖といっても製法が異なれば構造が変わり、まったく別種の襖が生まれます。そんな多様な特徴を持つ襖にはどんな種類があるのか、以下でご説明します。
構造別の種類
構造材がそのまま仕上げ材となる障子に対し、襖は「化粧縁」と呼ばれる下地骨の組子で外枠をつくり、紙を幾重にも貼り合わせる構造です。紙を重ねていく過程でそれなりの強度が求められるところに、障子と異なる特徴があります。
<和襖>
組子で骨組みをつくり、その上から紙を重ね、化粧縁で外枠を設けます。木枠は組子構造で、表裏を交互に組み付ける「地獄組み」にして補強します。
<板襖>
ベニヤを用いることから、「ベニヤ襖」とも呼ばれるタイプ。組子の上にベニヤを貼り、襖下地をつくります。縦方向は太縁で支え、横方向は組子を組み付けて固定します。
<量産襖>
組子に替えてダンボールコアを用いた襖です。下地として用いられるのは、ダンボール芯材やペーパーコア、発泡プラスチックなど。それらの素材に下貼・上貼し、湿気防止用のアルミ箔を貼って難燃性を高めます。軽量で扱いやすく、安価なものが多いという特徴があります。
素材別の種類
素材としては、大きく分けて「和紙襖紙」「織物襖紙」の2種類があります。
<和紙襖紙>
襖の和紙は伝統的な技法によって製造されます。手漉きでつくられる和紙は「本鳥の子」、機械で漉いてつくるタイプの和紙は「鳥の子」というふうに区別されます。
雁皮や楮などの繊維素材の色合いは、鶏卵の殻と似ています。そんな特徴もあることから、これらの素材を漉いてつくられる和紙を「本鳥の子」と呼ぶようになったとのことです。手触りが柔らかく、独特の光沢を持つのが特徴。雁皮紙でつくられたもの(特号紙)、みつまたでつくられたもの(二号紙)、あるいは雁皮紙にみつまたを組み合わせた一号紙など、紙料の種類も豊富です。用いられる紙の種類で強度や技術レベルが異なり、仕上がりにも反映されます。
抄造機で漉いた「鳥の子」も、雁皮やパルプなど紙料は複数の種類に分かれます。仕上がりは滑らかで、手漉きの肌触りとそん色ありません。
<織物襖紙>
自然素材や合成繊維を使い、一枚ずつ織り込んで製造される襖紙です。自然素材ならではの風味を生かし、伝統技術によって丁寧に織り込まれた襖紙は高級品として重宝されます。素材の違いによってさまざまな風合いや手触りを楽しめるところも、織物襖紙の持つ奥深い魅力といえます。
まとめ
使われる素材が違えば、見た目の印象や触感も異なる襖が生まれます。製法によって襖の構造も変わり、その多様性が用途を広げます。そんな繊細さもあわせもつ襖は、上質な和の空間を演出する建具として、今後も愛され続けることでしょう。
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