江戸の町は火災が多かったことで知られますが、それでも火事に負けなかった建築物が土蔵造りです。江戸時代に防火対策として多く建てられた土蔵の建造技術は、現在にも活かされています。そこで今回は、伝統的な防火技術の歴史とともに土蔵に見られる漆喰壁の特徴についてご紹介します。
江戸の大火にも耐えた土蔵造り
土蔵造りの建物は江戸時代に流行し、町が大火に見舞われたときには優れた防火性能を発揮しました。
土蔵造りの歴史
土蔵造りの起源は明確に分かっていませんが、遅くとも中世頃には登場しています。土壁の上に漆喰などを塗る構造で、文字通り蔵に多用された建築様式です。
戦国時代にはその防火性能に注目が集まり、城郭や天守閣の建築に取り入れられました。土壁と漆喰を組み合わせた城郭としては、白鷺城の別名をもつ姫路城が有名です。
優れた防火性能
漆喰仕上げは、江戸時代に完成したといわれています。当時、江戸の町では火事がよく起きました。その多さは、「火事と喧嘩は江戸の花」と表現されるほどのレベルです。家屋が密集していたため、炎が町全体に燃え広がる場合もありました。
そんな大火のなかでも、優れた防火性能により焼け残ることの多かった建物が土蔵造りです。蔵の収蔵品の多くが焼け残ったことから、江戸では火事が増えるとともに土蔵造りも盛んになったと考えられています。
漆喰材が燃えにくい理由
漆喰のもつ耐火性の高さは、古くから人々に知られていました。その主な要因は、主原料である消石灰の性質にあります。
なぜ漆喰材は燃えにくいか
もともと漆喰の主原料であった消石灰は、不燃性の成分です。同時に漆喰は、固まると石灰岩に戻る特徴をもっています。これらの要素の働きにより、漆喰の塗られた土壁は火事のときでも簡単には炎を通しません。
さらに昔の土蔵は、漆喰を30cm以上も盛っている例が多く見られます。漆喰の厚さが増して高くなった防火性能のおかげで、土蔵は大火にも耐えられました。
江戸時代と現代の漆喰の違い
江戸時代、漆喰の主原料である消石灰はサンゴなどの化石を焼いてつくられました。そこに海藻や麻の繊維を混ぜたものは本漆喰と呼ばれ、自然乾燥するまでに時間がかかるのが特徴でした。なお、この製法で火災時に有害物質は発生しなかったといわれます。
一方、現代の漆喰は、適度な乾燥と割れにくさを持たせるため化学物質を含ませています。商品によっては火災時に化学物質の作用で有毒ガスが発生する恐れもあり、注意が必要です。
まとめ
江戸時代の土蔵造りは、漆喰を塗ることで大火のときにも優れた防火性能を誇りました。その防火技術は、現代の漆喰壁などにも応用されています。防災効果のあるお住まいの建築をお考えなら、漆喰壁の導入はおすすめです。
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