「釘一本使わず精巧な建具を完成させる」
このように表現される組子細工。わが国には、先人たちが釘を使わずに高度な建具や住居を作ってきた歴史があります。今回は、日本で独自に発展した木工技術によってもたらされた伝統芸の魅力に迫ります。
日本で生まれた伝統工芸の魅力
組子、指物、挽物、寄木細工、漆器、陶磁器など、日本には数多くの伝統工芸があります。なかでも組子と指物は、釘を使わない精巧な作り方に注目が集まる伝統技術です。
指物とは、木の板をさし合わせて箪笥や棚、机などを作る木工品のこと。組手でさまざまな模様を描き出す組子と異なり、指物の組手は外側から見えません。「ほぞ」と呼ばれる小さな切り込みを入れて精緻に組み合わせていく技法で、目に見えない組手や継ぎ目の作りほど高い技術が求められます。
指物のデザインを決めるのは漆塗りや箔といった技法ですが、組子は組手そのものが美しい紋様を映し出す絵になります。釘を一本も使わないからこそ、幾重にも木組みが可能になり、意匠のバリエーションも増していきます。そうでありながら脆くなく、頑丈な作りです。
組子は飛鳥時代、指物は平安時代にまで歴史をさかのぼることができます。釘を一本も使わない技法と職人たちの気質は、一千年以上にわたって受け継がれてきました。今では海外からも高い評価を受けています。
独自の発展を遂げた日本の木工技術
日本で生まれた伝統工芸品の多くは、木材を原材料とする木工品です。組子なども木工技術の発展した姿といえましょう。日本でこのように木工技術が高度に発展した背景には、製鉄技術の発達に遅れをとった一方で、温暖湿潤な気候で豊富な森林に恵まれていることなど、さまざまな要因があります。
木造住宅は、湿気の多い日本にはもっとも適した建物といえるかもしれません。木には湿度を調整し、熱を逃す性質があります。蒸し暑くジメジメした夏はとくに木造住宅での生活は過ごしやすく感じるものです。
地震の多い国という特殊性も、木工技術に創意と工夫をもたらしました。釘を使うよりも、木の柔軟性を生かして木と木を組み合わせるほうが耐震強度の高い建築物ができ上ります。法隆寺や東大寺などが今なお現存する姿は、日本の木工技術がいかに高いかを物語っています
まとめ
組子は日本が誇る伝統工芸です。釘を使うことなく多様なデザインを創り出す技術は、世界からも高く評価されています。建具はもちろん、インテリアの置き物にもなる伝統工芸。機会があればぜひお楽しみください。
【組子特設サイト】
https://www.abekogyo.co.jp/kumiko/
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